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Japanese Living Bible Old Testament Esther
エステル記
本書は、ペルシヤ人がバビロンを滅ぼしたのちも、多くのユダヤ人が捕囚の地に残ってい
たころに起こった、重大事件について記されています。 物語は、ペルシヤ王アハシュエ
ロスの王妃になった、エステルという一ユダヤ人にまつわるものです。 王の相談役ハマ
ンは、ユダヤ人の財産管理権を獲得するためユダヤ人虐殺を企てますが、エステルが介入
し、自国民の破滅を防ぎました。 ハマンが処刑され、小さな市民戦ののち、再び平和が
訪れます。 この記念すべきユダヤ人の救出は、プリムの祭りとして祝われ、今日まで続
いています。
1‐3アハシュエロスは、インドからエチオピヤにまで及ぶ広大なメド・ペルシヤ帝国の
皇帝でしたが、その治世の第三年に、シュシャンの王宮で盛大な祝宴がくり広げられまし
た。 皇帝は各地から、総督、随員、将校たちをみな招待しました。 4お祭り騒ぎは六
か月も続き、帝国の富と栄光を誇示する、またとない機会となりました。
5 この期間が終わった時、王は宮廷の門番から閣僚に至るまでをみな招んで、庭園で七
日間、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを楽しんだのです。 6大理石の柱の銀の輪には、飾
りつけの緑、白、青の布が、紫のリボンで結びつけられ、黒、赤、白、黄色の大理石がは
め込まれたモザイク模様の歩道には、金銀の長いすが並べてありました。 7飲み物は、
さまざまなデザインの金の杯に、なみなみとつがれています。すっかり気が大きくなった
王は、王室とっておきのワインなども惜しげなくふるまいました。 8酒を飲むのは全く
自由で、むりやり勧められることも、強いて遠慮させられることもありません。 王が役
人たちに、皆の好きなようにさせよ、と言い含めておいたからです。
9 同じころ、王妃ワシュティも、王宮の婦人たちを集めてパーティーを開いていました。
10 さて、最後の七日目のことです。 かなり酒のまわった王はつい調子に乗り、王の
後宮に仕えるメフマン、ビゼタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタル、カルカスら七人
の役人を呼びつけ、 11王妃ワシュティに王冠をかぶらせ、連れて来るようにと命じま
した。 絶世の美人である彼女の美しさを、並み居る人たちに見せたかったのです。12
彼らがその旨を伝えたところ、王命にもかかわらず、王妃は言うことを聞こうとしません。
王はかんかんに腹を立てましたが、 13‐15とりあえず、おかかえの法律専門家たち
に相談することにしました。 彼らの助言なしには何もできません。 彼らはペルシヤの
法律と裁判に通じているばかりか、臨機応変に事を処理できる知恵者でもあり、王は全く
信頼しきっていたのです。 その法律専門家というのはカルシェナ、シェタル、アデマタ、
タルシシュ、メレス、マルセナ、メムカンの七人で、いずれもメド・ペルシヤの高官でし
た。 ただ政府の有力者であるだけでなく、王とも個人的に親しくしていました。
王はさっそく意見を求めました。 「今度の件だが、どうしたらいいものかな。 王妃の
やつめ、側近を通じ、ちゃんと手続きを踏んで出した命令をはねつけおった! いったい
法律では、どのように罰せよと定めておるのか。」
16 メムカンが一同を代表して答えました。 「陛下、王妃は、陛下ばかりか、役人や
全国民にまで悪い手本を残しました。 17と申しますのも、これをいいことに、女ども
はだれもかれも王妃のまねをして、夫に逆らうに違いないからです。 18今晩にも、国
中の役人の夫人連中は、われわれ亭主族に口答えするに決まっております。 そうなれば、
陛下、領地内はくまなく軽べつや怒りであふれ返りますぞ。 19もしよろしければ、勅
令を出し、絶対不変のメディヤとペルシヤの法律で、ワシュティ王妃を永久に追放し、代
わりにもっとふさわしい王妃を選ぶとご宣言ください。 20このお布令が帝国のすみず
みまで及びますと、身分にかかわりなく、世の夫どもの尊厳は女房の手前、守られるので
ございます。」
21 なるほど、そのとおりです。 王も側近の者もメムカンの意見に従うことにしまし
た。 22こうして王は各州に通達を出し、それぞれの民族のことばで、男はみな一家を
治めること、また家長としての威厳を保つことを強調したのです。
1 憤りがおさまると、アハシュエロス王は、今さらながら、ワシュティに会えないのが
寂しくてたまりません。
2 見かねた王の側近がこう勧めました。 「おこころが晴れますよう、国中から特に美
しい娘を探してまいりましょう。 3各州に、このための役人を任命し、後宮にふさわし
い若く美しい娘を選ばせるのです。 後宮の監督官ヘガイには、化粧品などを取りそろえ
る役目を仰せつけください。 4そうして、最もお気に召しました娘を、ワシュティ様の
代わりに王妃にお迎えになってはと存じます。」
この提案に王が有頂天になったことは、言うまでもありません。さっそく実行に移しまし
た。
5 さて、王宮に一人のユダヤ人がいました。 ベニヤミン部族の出身で名をモルデカイ
といい、ヤイルの息子でした。 ヤイルの父はシムイ、シムイの父はキシュです。 6彼
は、エルサレムがバビロンのネブカデネザル王の手に落ちた時に捕らえられ、ユダのエコ
ヌヤ王をはじめ多くの人々とともに、バビロンへ送られたのでした。 7このモルデカイ
は、ハダサ、またの名をエステルという若く美しい娘を育てていました。 実際はいとこ
に当たるのですが、年もずいぶん離れていたことでもあり、両親が亡くなったあと、手も
とに引き取ったのです。 8さて、王のお布令が出ると、エステルもほかの大ぜいの娘と
ともに、シュシャンの王宮内の後宮に連れて来られました。 9ところが、後宮を管理し
ていたヘガイが、特にエステルを気に入り、彼女のためには何でもしてくれるのでした。
特別の食事や化粧用の品々など、何かにつけて便宜をはかってくれます。 わざわざ王宮
の侍女を七人呼んで身の回りの世話をさせるやら、後宮一の部屋をあてがうやら、それは
もう大そうなものでした。 10エステルは自分がユダヤ人であることを、だれにも黙っ
ていました。 モルデカイに堅く口止めされていたからです。 11モルデカイは毎日、
後宮の庭に来てエステルの安否を尋ね、これから先の成り行きを見届けようとしていまし
た。
12‐14選ばれた娘たちについては、こういう取り決めがありました。王の寝所に召さ
れる前に、没薬の油で六か月、ついで特製の香水と香油で六か月、それぞれ美しさにみが
きをかける期間が約束されていたのです。 それも終わり、いざ王のもとへ召される時が
くると、精いっぱい美しくよそおうため、衣装でも宝石でも願いどおりの物が与えられま
す。 こうして夕刻、王の部屋へ行き、翌朝には、王の奥方たちの住む別の後宮へ移るの
です。 そこではまた、シャアシュガズという別の役人の管理のもとで、一生を送ること
になります。 そこにいる婦人は、特別王に気に入られ、指名されないかぎり、二度と王
のそばへ行くことはできません。
15 さて、いよいよエステルが王のもとへ行く番になりました。 彼女は、例のヘガイ
に見立ててもらった衣装を身につけました。 その姿の美しさには、ほかの娘たちもいっ
せいに歓声をあげるほどでした。16こうしてエステルは、王の治世の第七年の一月に召
し入れられたのです。 17王はほかのだれよりもエステルを愛しました。 すっかり気
をよくした王は、彼女に王冠を与え、ワシュティの代わりに王妃にすると宣言したのです。
18この記念に、王はもう一度、高官から召使に至るまで全員を集め、大宴会を開きまし
た。 諸州には、気前よく贈り物を配ったり、免税を認めたりしました。
19 のちに、王がまた美人選びをしようとした時、モルデカイは政府の役人に取り立て
られていました。
20 エステルはいまだに、ユダヤ人であることを隠し通していました。モルデカイの家
にいた時と同じように、彼の言いつけをよく守っていたのです。
21 そんなある日のこと、宮殿警護の当直にあたっていたモルデカイは、たまたま、城
門の警備についている後宮の役人ビグタンとテレシュが、王への腹いせに暗殺計画を練っ
ているのを知ったのです。 22ぐずぐずできません。 さっそく王妃エステルに通報し
ました。 すぐさまエステルは王の耳に入れ、これを知らせてきたのはモルデカイである
ことも、忘れずにつけ加えました。 23取り調べの結果、ゆるがぬ証拠があがり、二人
ははりつけになりました。 この件に関しては、アハシュエロス王の年代記にくわしく記
されました。
1 その後まもなくして、王は、アガグ人ハメダタの子ハマンを総理大臣に抜擢しました。
今やハマンは、国王に次ぐ実力者です。 2彼に出会うと、王の家臣はみな、うやうやし
く頭を下げます。 そうするようにとの王の命令だったのです。 ところがモルデカイだ
けは、絶対に頭を下げようとしませんでした。
34周囲からは、くる日もくる日も、「どうして王の言いつけに背くんだ」と責め立てられ
ます。 それでも彼は、頑として聞こうとしません。 そこでついに人々は、モルデカイ
だけに勝手なまねをさせてなるものかと、ハマンに密告したのです。 モルデカイが、自
分はユダヤ人だから別だ、と主張していたからです。 56ハマンはかんかんに腹を立て
ましたが、モルデカイ一人に手を下すだけではおもしろくありません。 いい機会だから、
このさい国中のユダヤ人を皆殺しにしてやろうと考えました。 7計画を決行する日は、
さいころで決めることにしました。 アハシュエロス王の治世の第十二年の四月のことで
す。 その結果、決行の日は翌年の二月と決まりました。
8 こうしてハマンは、王にうかがいを立てました。 「この帝国のどの州にもくまなく
入り込んでいる、ある民族をご存じでしょうか」と、彼は切り出しました。 「彼らの法
律と申しますのが、どの国のものとも違っておりまして、そのために陛下の命令に従おう
ともいたしません。 この上やつらを生かしておいては、陛下のおためになりません。 9
もしよろしければ、やつらを皆殺しにせよとの勅令を、出していただけませんか。 必要
な費用につきましては、私が六十億円を国庫に納めさせていただきますので。」
10 王は同意し、考えの変わらぬしるしにと、指輪をはずしてハマンに渡しました。 1
1「金の心配はいらんぞ。 さあ、とにかくおまえの考えどおりにやってくれ。」
12 二、三週間後、ハマンは王の書記官を呼び集め、国中の総督や役人あてに手紙を書
かせました。 州ごとに、それぞれの言語や方言で書くのです。 一通ごとにアハシュエ
ロス王の署名があり、王の指輪の印が押されます。 13手紙は急使を立て、全州に送り
届けました。手紙の内容は、ユダヤ人は老若男女を問わず、翌年の二月二十八日を期して
皆殺しにすべきこと、なお彼らの財産は、手を下した者が取ってよいことなどでした。 1
4そのあとに、「この勅令の写しをとり、各州の法令として公示し、全国民に通達すべきこ
と。 各人は、決行当日のため準備をしておくこと」と書き添えてありました。 15勅
令はまずシュシャンの都で発令されたのち、至急便で各地方へ送られました。 都が騒然
とし始めたころ、王とハマンは酒をくみ交わし、悦に入っていました。
1 事のいきさつを知ったモルデカイは、あまりのことに着物を裂き、荒布をまとい、灰
をかぶって嘆き悲しみました。 それから、大声で泣きながら町へ出て行ったのです。 2
彼は城門の外に立ちました。喪服を着たままで入ることは、だれひとり許されていなかっ
たからです。 3どの州でも、ユダヤ人の間ではすさまじい嘆きの声が起こりました。 王
の勅令を聞いて生きる望みを失い、断食して泣き、大部分が荒布をまとっては、灰の上に
座り込みました。
4 モルデカイの様子は、侍女や後宮の役人の口を通して、エステルの耳にも達しました。
彼女は心配で居ても立ってもいられず、着物を送って、荒布を脱ぐようにと伝えましたが、
彼は受け取ろうとはしません。 5そこで、自分に仕えてくれる役人ハタクを呼び寄せ、
モルデカイのもとへ行き、なぜそんな振る舞いをするのか聞きただしてほしい、と命じた
のです。 6ハタクは町の広場に出て、城門のそばにいるモルデカイを見つけました。 7
モルデカイの話から、いっさいの事情がはっきりしました。 ハマンが、ユダヤ人を殺す
ためには六十億円を国庫に納めてもよい、とまで言ったというのです。 8モルデカイは、
ユダヤ人殺しを命じる勅令の写しを渡し、エステルに見せてくれと頼みました。 そして、
エステルみずから王の前に出て、同胞のために命乞いするようにとことづけたのです。 9
ハタクはそのとおりエステルに伝えました。 10エステルは困りました。 どうしたら
よいのでしょう。 そこでもう一度、ハタクをモルデカイのもとへやりました。
11 「この国では、お呼びもないのに王宮の内庭に入ったりすれば、男でも女でも即刻
打ち首なのです。 陛下が金の笏を伸べてくだされば別ですけれど……。 それにもう一
月も、陛下は私を召してくださいません。」
12 ハタクはエステルの苦しい心中を告げました。
13 しかし、モルデカイの答えはきびしいものでした。 「ユダヤ人がぜんぶ殺される
というのに、王宮にいるからといって、おまえだけが助かるとでも思うのか。 14もし
も、この事態をおまえが手をこまぬいて見ているなら、神様は別の人を用いてユダヤ人を
お救いになるだろう。 だがいいか、おまえと一族だけは滅びると覚悟しておけ。神様が
おまえを王妃となさったのは、ひょっとして、この時のためかもしれないのだぞ。」
15 折り返し、エステルからの返事が届きました。
16 「シュシャンにいるユダヤ人をぜんぶ集め、私のために断食させてください。 三
日間、昼も夜も、飲み食いしないでください。 私も侍女もそういたしますから。 その
あと、国禁を犯してでも陛下にお目にかかるつもりです。 そのために死ななければなら
ないのでしたら、いさぎよく死にましょう。」
17 モルデカイはエステルの言うとおりにしました。
1 こうして三日後、エステルは王妃の服装をし、王宮の内庭に足を踏み入れました。 そ
の向こうに謁見の間が続き、王は王座にすわっていました。 2ふと見ると、王妃エステ
ルが内庭に立っています。王は、「よく来た」と言わんばかりに、金の笏を差し伸べました。
そこでエステルは進み出て、笏の先にさわりました。
3 「どうした、エステル。 何か願い事でもあるのか。 申してみい。 たとい帝国の
半分でもな、おまえにならやるぞ!」
4 「もし陛下さえおよろしければ、きょう陛下のために宴を催したいと存じます。 ど
うかハマン様とごいっしょにお越しくださいませ。」 エステルは、かしこまって答えまし
た。
5 それを聞いて王は側近を振り返り「ハマンに、急いで来るよう申せ!」と命じました。
こうして王とハマンは、エステルの宴会に来ることになったのです。
6 酒がふるまわれる時になって、王はエステルに尋ねました。 「さあ、どうしてほし
いのか申すがよい。 たとい国の半分でもやるぞ!」
78「お願いでございます、陛下。 もし陛下が私を愛し、おこころにかけてくださいま
すなら、どうかあすも、ハマン様を連れてお越しくださいませ。 あすの夜、何もかも申
し上げたいと存じます。」
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